大動脈疾患

徴・症状

大動脈瘤とは、正常では直径2cm程度の血管が風船のように膨らんでいく病気です。
大動脈瘤が大きくなるほど、破裂や解離(大動脈が裂ける)の危険が高くなります。
瘤の大きさが5cm以上では8人に1人、6㎝以上では6人に1人が、1年以内に破裂や解離など命に関わる状態になると報告されています。*
破裂するまで症状はありませんが、一度破裂してしまうと急変することが多く、手遅れになる可能性があります。
破裂する前に治療することが大切です。

大動脈疾患のイメージ

*Davies RR, et al. Ann Thorac Surg 2002;73:17-28.

治療方法

人工血管置換術

胸部大動脈瘤の治療として、人工血管による治療は以前から行われてきた標準的な治療方法です。
ステントグラフト内挿術に比べて、体にかかる負担は大きくなりますが、人工血管置換術は動脈瘤を切除するため動脈瘤は残らず、完全に治るので長期成績が良好です。

人工血管置換術のイメージ

胸部ステントグラフトの治療

ステントグラフト内挿術とは、細く折り畳んだ人工血管を、足の付け根からカテーテルで胸の大動脈瘤の内側に挿入する治療です。
胸や腹を切る必要はありません。瘤は残りますが、血圧が動脈瘤にかからなくなるため、破裂が予防できます。
ステントグラフト内挿術は、動脈瘤を切除するわけではないので、時間が経つとステントグラフトと自分の血管の間に隙間ができて、動脈瘤内に血液がもれることがあります。
これをエンドリークと呼びます。その場合、追加治療(カテーテル治療)が必要となる可能性があります。
従って、定期的な外来通院及び造影CT検査は必須となります。

大動脈瘤手術のイメージ

自己弁温存大動脈基部置換術
―上行基部大動脈瘤にともなう大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁輪拡張症)の治療―

徴・症状

上行大動脈が太くなって大動脈瘤になったために、心臓の出口にある大動脈弁が横に広がって閉まらなくなり、体に送り出した血液が心臓に逆流している状態です。逆流により心臓にどんどん拡大して、心臓に負担がかかり続けています。何もしなければ、心臓はどんどん大きくなって動きが悪くなり、心不全により日常生活や食事は制限されます。また、大動脈瘤が大きくなると、大動脈解離(大動脈が裂ける)や大動脈瘤破裂を起こし、突然命を落とす可能性があります。

治療方法

治療方法は、大動脈瘤を人工血管で置き換え、自己弁を温存する手術(デービット手術)、または自己心膜による大動脈弁形成術です。自己弁及び自己心膜弁は、術後に食べ物の制限がなく、血液をサラサラにする薬も必要ないという利点があります。通常は人工弁付き人工血管で、大動脈基部を置き換える手術(ベントール手術)をしますが、当科では人工弁を入れない治療方法を第一選択として力を入れています。

人工血管置換術のイメージ
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